社会を担い、社会の新たな当たり前を創っていく“個”として私たちanowが定義する「SOCIAL QUANTUM」。
今回の特集では、これまでの特集を通して見えてきた「共創」というSOCIAL QUANTUMの特徴にフォーカスを当てます。
特集0では、SOCIAL QUANTUMがどのような存在なのか、また彼ら・彼女らが活躍していくための条件・要素、その先にある社会の姿をどのようにイメージしているのかを深堀り、
- “個”として社会と向き合い、明確な目的を持って活動をはじめている
- 自分のアイデアや実践を絶対的なもの=解答として扱わず、あくまで暫定的なもの=回答と考え、様々な問いとその回答が存在することを自覚している
という定義にいきつきました。
特集1では、彼ら・彼女らの定義から「“個”として確立していること、そして自身とは異なる多様な“個”を認められること」に着目し、「多様性の時代に、わたしたちは個性とどう向き合うのか?」を紐解きました。
その中で見えてきたのが「個性を固定されたものとして捉えない」という考え方です。
彼ら・彼女らは、個性を
- 他者との関わりによって現れるもの
- 自分以外の何かとの関係性の中で生まれる、もしくは気づく自分の特徴
と捉えています。
「自身の個性でさえ固定的ではなく、誰の個性も良し悪しを持たない」という考えが多様性を当たり前に受け入れる素地となっています。
「目的工学」を提唱する経営学者の紺野登氏は、世界的に有名な野中郁次郎氏との共著「 知識創造経営のプリンシプル―賢慮資本主義の実践論」において、以下のように述べています。
これからは、国や社会があって企業があって個人がある、といった同心円が弱まり、個人の創造的能力や関係性(ネットワーク)が力を持つ時代が来る
知識創造経営のプリンシプル―賢慮資本主義の実践論
そして、「私たちが直面している社会や環境の激動は、企業一社ではとても対応できないわけで、大きな目的のために競争ではなく共創することがイノベーションの本質である」とも述べています。
“個”として確立する一方で“個性”は固定的ではないと、そして、自分のアイデアや実践についても暫定的なものだと考えている。明確な目的は持っているが、その目的は社会全体の目的と合致するものではなく、自分を含む一部の社会にアプローチするものであり、また変動する可能性のあるものだと認識している。所属する組織を通してではなく自身として社会と接している自覚を持ち、個人の創造的能力や関係性(ネットワーク)を高めている。そんな彼ら・彼女らは、常に自身の目的、活動について分析し、スクラップアンドビルドを繰り返しながら日々進化していっているのではないでしょうか。
その結果、彼ら・彼女らは、自身の目的を言語化し、共有することに長け、同じく明確な目的を持つ多様な“個”を認め、連帯感を持って、目的の一部が合致することがあれば当たり前かのように「共創」します。そして時には自分が運営/所属する組織、また同じ目的を持つ企業や行政をも「共創」に巻き込みます。
従来の企業同士の「協創」は、各社の目的を達成するために「協力」して、新しい製品やサービスを創り出し、その成果を分け合うものです。それに対し、SOCIAL QUANTUMによる「共創」とは、各々の目的の「共通点」に対して各々のやり方で「共」にアプローチし、社会に新しい価値を生み出すことだと考えます。
従来の企業が各社の目的を達成するための協創では、アプローチの手法が合う相手を探すため、相手はどうしても近しい分野に絞られます。
一方、目的は共有しながらも、アプローチには各々の手法を取る「共創」の相手は、異業種、異文化、異世代など、異質性の高い者になりえます。そして、彼ら・彼女らは、その重要性を知っているからこそ、日々同じ熱量を持つ同志とのネットワークを領域にとらわれず広げ、目的を共有し、「共創」のチャンスを探り、実践していっているのではないでしょうか。
今回の特集では、「共創」の中でも特に彼ら・彼女らだからこそ起こった、異質性の高いコラボレーションに着目し、その活動の意義、またコラボレーションによってどんな新しい社会的価値が生み出されているのかを探りたいと思います。
原田 真希
anow編集部
エディター/リサーチャー